甘く、苦く
第80章 にのあい【愛 think so.】
あぁ、そうか。
わかっていたつもりだったけど、
やっぱり間違ってたんだ。
辛かったのは、俺だけじゃない。
辛くて、寂しくて、どうしようもなくて。
それは、俺だけじゃなかったんだ。
独り善がりだったんだ。
忙しいのに毎日連絡くれたり、
撮影時間を巻いてくれたり、
…全部、俺のためだったんじゃん。
「…ありがとう。」
「ん?」
「いつもまーくん頑張ってるのに、
俺全然気付けてなかったね。」
「…そんなことないよ。
毎日ニノの声聴けるだけでも
結構頑張れたし。
そりゃ、寂しくなかったって言えば
嘘になっちゃうけどさ。」
へへ、なんて呑気に頬を掻いて、
下手くそなウィンクを俺に見せてから、
「…でもやっぱり、
ニノの声だけじゃ足んないね。
今日会えて本当によかった。」
だなんて、
いつもより優しい笑顔と、
柔らかい声音で言うから。
また、泣き出したくなるじゃん。
…俺の言って欲しい言葉、
全部言ってくれちゃうなんて、狡いよ。