
甘く、苦く
第81章 お山【Now I'm ready.】
仕事仕事って打ち込んでたのは、
俺との時間を作るためだったんだ。
「あっ、やべ、時間だわ。
ごめん、智くん。」
「謝んなくていいよ」
「ちょっ、優しすぎ。待って。泣きそう。」
「泣かないで笑」
「…ふは、」
またいつもみたいに、
くしゃっと笑ってから
「12時前には帰ってくるから、
待っててね。」
ってほっぺたにキスをした。
「…朝ご飯、どうする?」
「あー…いいよ。
なんとかなる。」
「そう?」
「うん。」
ふわっと笑ってから、
俺を引き寄せて
「好きだから。」
って小さな声で言う。
…あぁ、一番幸せかも。
だって俺、ずっと我慢してたんだもん。
今日くらい、甘えたいよ。
「もう1回言って?」
「…ふふ、すーき。」
「うん、俺も。」
ふたりでバカみたいにそんなこと言って
笑い合って。
こんな瞬間、
もう何週間ぶりかな。
