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櫻井side



最近まともな休暇がとれなくて、
イライラしていた。

智くんからの好意も、
すべて拒絶していた。

そうじゃないと、
この怒りの矛先を智くんに向けそうだったから。

智くんとの旅行のために頑張ってる仕事は、
智くんと一緒に過ごせる時間を
どんどん潰していくんだ。


旅行はナシにしようっていうのは、
もっと遠いところに行きたかったから。

本当に、ふたりだけで、
ふたりだけの世界で
ゆっくり休みたかったから。



それが智くんを傷付けてるなんて
思わなかった。

いつの間にか、
智くんを傷付けていた。


俺は自分のことで精一杯だったから、
謝っても謝り足りない。


智くんは何度も口に出して言ってくれたのに。

「好き」って言葉を。

俺は曖昧な返事しか返せないし、
いつも適当に済ませていた。

「あぁ」とか「うん」とか。


…そういえば、
俺から好きって言ったことはあっただろうか？

思い出せないくらい昔のこと。


……俺、智くんのこと
大切にできてないじゃん。