
甘く、苦く
第82章 末ズ【Omens of love.】
…全然来ないや。
やっぱり、俺の我儘で振り回しちゃったのかな。
……でも、
会いたい時に会いたいって言わないと
あとで後悔する気がして。
今すぐに、会えないのはわかってるけど
今すぐに会いたい人がいる。
それってすごく、
いいことだと思うんだけど。
「…潤くん…」
ねぇ、今どこら辺かな。
早く会いたい。
ー ピンポーン♪ ー
「っ…」
潤くんだ。
ぱっと顔を上げてリビングから飛び出た。
嬉しくて、顔がニヤける。
俺、バカみたい。
こんなことでもニヤニヤしちゃうんだ。
俺って、…すっごい単純なヤツ。
「潤くんっ」
「ぅおっ…」
声の主は、やっぱり俺の大好きな人。
待ちくたびれちゃったよ。もう。
ずっと恋しくて恋しくて、
堪んなかったんだから。
「…あれ、和。
なんかいい匂いするね。」
「あっ、わかった?
シャンプー変えたの。」
「ふふ、いい匂いだね。
爽やかな感じでいいんじゃない?」
普通の人なら気付いても
話題になんてしないこんな些細なこと。
でも、潤くんは違う。
何をしたら俺の機嫌が
良くなるとか、悪くなるとか。
全部知り尽くしちゃってんだ。
