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甘く、苦く

第82章 末ズ【Omens of love.】




行き場のない想いを
どこにぶつければいいのかわからず、
ずっとモヤモヤしていた。

少し前を歩く和の肩に手を伸ばそうとして、
やっぱり手を引っ込めたり。

そんな葛藤。



「あ、潤くん、お酒飲む?」


気付けば、リビングにいた。

和がビール片手にグラスを持って
俺に微笑んだ。

…そういう嬉しそうな顔、
ほんとズルいと思う。


「…うん、飲む。」

「うん、飲もっか。」


ほんのり頬を赤く染めて、
俺にはい、ってグラスを渡す。

そんな顔も、
今の俺からしたらかなり刺激的だ。


「ありがと。和。」

「んふふ、どういたしまして。」


カッコよく決めたいのに、
なかなかうまく決められない。

今だって、照れた和の顔が見たかったのに。


こっちが赤くされる。


「あ、そういえば、仕事はどう?
今度いつ会えるかな?」


グラスを傾けながら
ちらっと俺を見つめる。

一瞬だけ見えた鎖骨が妙に色っぽくて。


「…またすぐ、会えるよ。」


そういって、濁した。

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