
甘く、苦く
第82章 末ズ【Omens of love.】
予定より二時間遅刻した俺。
…やっぱり怒られるかな?
ドアが開いてなかったから、
スペアキーを使って開けた。
さすがに、もう寝ちゃったとかないよな?
「ただいまー…」
そっと重たいドアを開ければ、
リビングから漏れる光。
…おかしい。
おかえり、って笑顔で迎えてくれない。
…やっぱり疲れて寝ちゃったか?
「…和?」
リビングに入れば、
ソファーに座る和がいた。
なんだ…なんてホッとした。
「…ばか。」
赤く腫れた瞳と目が合い、
ことの重大さを理解した。
「っ、ごめん、」
「…ごめんって言葉だけじゃ、
済むことじゃないでしょ。普通…。」
俺の胸で泣きじゃくって、
離れない。
「潤くんの誕生日、
もう少しで終わっちゃうよ…」
「…それ、だけ?」
「…っ、それだけって!
潤くんの大切な日なんだよ!?」
余計なことを言ってしまった。
涙は溢れて、俺のシャツを濡らした。
「…ごめん、本当は嘘だった…。
遅刻とか、予定が入ったとか…。」
「……は?」
未だ廊下に置かれた紙袋を取りに行こうと
リビングから出た。
