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甘く、苦く

第82章 末ズ【Omens of love.】




リビングにソレを持ってきて、
和の目の前に置いた。


「…なに、これ…?」


目をパチパチさせながら、指を指す。


「……何か言ってよ、潤くん…」


不安そうに俺を見つめて、
瞳をうるっとさせた。

泣かれたら困る、なんて思いながら、
これを見せたら和は泣いてしまうだろうか。


「…和、」

「…うん…」

「…目、瞑っててくれる?」


返事もなく、
ぎゅーっと目を瞑った和。


「絶対、開けちゃダメだからね。」


そっと和の左手を取り、
優しく口付ける。

紙袋からソレを取り出し、
音を立てないようにそっと開ける。


「…潤くん?」

「大丈夫。いるよ。」


キラリと光るソレを、
そっと和の指にはめた。


「っ…、潤くん…、これ…」


驚きを隠せないのか、
目を開いてしまった和。

本来ならば、このままキスをして
カッコいいセリフでも
言おうかと思っていたけど。


「和、今日はごめんな。
…あと、いつもありがとう。」

「潤くんっ…」


ぎゅっと抱き着かれて、
慌てて抱きとめた。


「ごめっ、潤くんの誕生日なのに、
俺、してもらってばっかりで…っ」


案の定、和は泣き出した。


「…いいんだよ。
俺がしたくてしてるから。

俺たちって、
お揃いのものなかったからさ。」


会えない時でも、寂しくないように。


「うんっ、うん…、」


ボロボロと涙を零して、
時折嬉しそうに顔を歪ませた。

そんな姿も愛おしくて、
長い間抱き締めていた。

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