甘く、苦く
第85章 大宮【スフレ】
大野side
和が「またな」と
呆気なく行ってしまった。
…寂しいとか、
そんなはっきり言う
キャラじゃないしね。俺は。
和は察してるんだろう。
…なのに、なんにも変化はしない。
それに、ちょっと冷たい。
俺にだけ…?
いつだって、そうだった。
ふたりになるとちょっと冷たい。
まあそんな所も含めて
好きになっちゃったんだから
文句は言えないんだけどさ。
「気付けよ、ばあか…」
さすがに鈍感すぎる。
こうやって和はきっと、
自滅していったんだろう。
…あーほんと、
愛情表現ヘタクソにもほどがあるよ。
幼馴染の俺でも
手こずるくらいだから、
他の人になんて手に負えないだろう。
…だから、ほら。
俺のこともっと大切にしろよ、
なんて面と向かっては言えないけど。
…もうちょっと、
優しくしてくれたっていいんじゃない?