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甘く、苦く

第86章 お山【レオナルド・ダ・ヴィンチ】



予鈴が鳴ってから、
大野はのろのろと動き始める。

「あ、次数学だあ」

大きく口を開けて欠伸をしてから、
ぐーっと伸びる大野。

「あ、教担二宮?」

「ん?そーだよお。
アイツ童顔だよねぇ。」

「ぶふ、わかる。」

あー、やだやだ。なんて言いながら
顔は笑っていた。
楽しそうに二宮のことを
悪く言っている。

少しだけ、もやもやとした。

「大野は二宮のこと好き?」

「…えっ?」

わかりやすく、顔を赤くさせた。

……え?


「え?」

「え、なに、翔ちゃん。
急にどうしたの?」

すごい、こいつ、わかりやすい。

あからさまに動揺してるし、
目が泳いでいる。

「好き、って、よくわかんないや。
……じゃあ、俺こっちだからっ」

「あ、うん、」

パタパタと階段を二段飛ばしで
駆け上がっていく大野の後ろ姿を見て、
ひとつ溜め息をついた。

まさかとは思うけど、
いや、そんなわけないよな。

「…バカらし。」

大野が、あんな顔するのは、
ここ数ヶ月で初めて見た。

あんな顔、するんだな。

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