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甘く、苦く

第86章 お山【レオナルド・ダ・ヴィンチ】


櫻井side


あぁ、俺、この人のことが好きなんだ。

もし、ひとつだけ、
願いが叶うとするならば。


「…付き合いませんか?」


耳元で、囁くように。

恥ずかしそうに目を逸らして、
ちょっともじもじさせてから。

大野は俺の顔を見て、
「…はい。」と、
小さな小さな声でそう言った。

その姿が愛おしくて、
また抱き締めたくなる衝動に駆られた。

…いや。
まだ、まだだ。


「大野、」

「ん?」


ふわん、と俺の大好きな微笑みを見せて、
首を小さく傾けた。

その仕草に、ドキッとしながら、
そっと距離を縮めた。

大野の手を取り、見つめた。

「あっ、え、…どうしたの?」

浮ついた声を上げて、
少し困ったように笑う。

いちいち、可愛いんだよな。

「…ん?」

「ついてきてくれる?」

「うん…」

嬉しそうに手を握り返して、
俺を見つめた。

それから、少しだけ背伸びをして、

「大好き」

と、囁いてから、
俺の頬にちゅ、とキスをした。

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