甘く、苦く
第87章 にのあい【この距離がどうにかならないかな】
ここにいたらみんなに
迷惑かける。
そう思って、
重たい腰を持ち上げた。
「あっ、二宮さん!
どこにいたんですか!?」
「ごめんごめん、
ちょっと腰痛くなっちゃってさぁ」
普段の俺と、何ら変わらない笑みで。
「ごめんね、心配かけちゃって」
メンバーに謝って。
みんなから心配されて。
「腰、平気なの?」
「うん、大丈夫だよ。
また休めばよくなるよ。
ありがと、潤くん」
「辛くなったら抱え込まないで
すぐ言えよな」
「うん、わかってる」
「とか言いながら
抱え込んじゃうのはお前の悪い癖だからな」
「…うん」
知ってる。
だって、迷惑も、心配も、
かけたくないんだもん。
「ごめんね、ほんと」
「いいよ、ほら、帰ろう」
潤くんに促されて、
会場を出た。
もうバスの中には、みんながいて。
大丈夫ー?って声をかけられて、
大丈夫ですよ、って返して。
そんなやり取りが何度も続いた。
「あ、二ノ相葉くんの隣座る?」
「あぁ、結構です。疲れてるんで」
座れるわけない。
俯いて、通路を挟んで
相葉さんの隣の席に着いた。
呼吸が乱れてるのは、
相葉さんのせいだ。