甘く、苦く
第87章 にのあい【この距離がどうにかならないかな】
「ごめん、ごめんね、」
俺が悪かったから。
全部、俺がいけなかったから。
「ねえ、だめだよ…」
俺の肩を押して、
やんわりと抵抗をした。
「明日も、あるんだし…」
それに、と辛そうに目を伏せて。
「俺は…俺は相葉さんの
都合のいい人にはなりたくないよ…」
それはつまり…
「そんなこと、思ったことない…」
声を絞り出したけど、
ひどく震えていて、
聞き取れなかったかもしれない。
「ウソ、ばっかり…」
ふいっとまた、顔を逸らされた。
ちくちくと胸が痛む。
「ね、腕、痛い」
「あっ、ごめん…」
ずっと、手首を押し付けてたままだった。
ふー、と溜め息。
「ほら、相葉さん疲れてんでしょ。
衝動でしょ?衝動。
そういう日もあるって。
でも…」
俺の首に腕を巻き付けてきて、
ちゅ、と軽くキスをした。
「こういうのは、
今日で最後にしよっか」
深く、口付けられて、
何も出来ない俺の舌を懸命に吸うニノ。
ねえ、ニノ。
何、言ってるの?
「ま、て、」
なに勝手に、決めてるの?
最後にするって、なに?
ねえ、ニノ。
「…俺は最後は嫌だ」
「え?」
「俺はニノが好きだ。
なのになんで最後なんて言うの?」
「……え?」
戸惑ったように口元を手で覆って
また、目を伏せてしまうニノ。
「ごめん、
嫌ならいいんだ」
「違うっ…!」
ニノがいきなり大きな声を出して、
俺をしっかり捉えた。
その目は、また、濡れていた。