甘く、苦く
第87章 にのあい【この距離がどうにかならないかな】
二宮side
好きだって、今…
相葉さんの口から、
俺が好きだって聞こえた。
聞き間違えかもしれない。
それでも、もう一回聞きたい。
「待って、だめ…」
一番聞きたかった言葉なのに、
言われて嬉しい言葉なのに、
どうしてこんなに涙が出るんだろう。
「っふ…ぅ、」
泣いてるところなんて、
見られたくない。
だけど、相葉さんから目を逸らせない。
相葉さんも、俺から目を逸らそうとしない。
「ぁ…やだ、ぁ」
そんな俺を見て、
相葉さんが欲情したのか。
俺が抵抗をしても、
頬を優しく撫でてくるから。
「ゃ、もぅ、」
俺の中にある黒い塊を、
ゆっくり溶かしてくれる。
頬を撫でられている間も、
涙は止まらないし、
相葉さんの優しい視線は俺に送られ続ける。
「ニノ…」
愛おしそうに、
俺の頬から頭へと手のひらが移る。
ドキドキして、
久しぶりの感覚が蘇る。
「…ばかああ」
今頃優しくされて、
ドキドキして。
そんな自分にも腹が立つけど、
今更優しくする相葉さんにも腹が立つ。
「ごめんね、ニノ、好きだから…
伝わらないなら何回でも言うから…
俺はニノが好きだよ。
愛してる」
ぎゅ、と抱きしめられた時に、
ふわりと香る俺の好きな匂い。
…これは。
「ねぇ、だめだよ、これは…」
俺が相葉さんに初めてあげた
プレゼントの香水だ。
「ねえ…」
「ふふ、俺この匂い好きだから」
「……ばか」
さっきまでの苛立ちを忘れて、
気付けば笑っていた。