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甘く、苦く

第88章 大宮【In Fact.】



すうっと深呼吸をしてから、
カズの潤んだ瞳を見つめた。


…好きだ。

これからもずっと、一緒にいたい。

隣にいてほしい。
ずっと、ずっと…。


「カズ、俺と付き合おう」

「……え?」

「ダメか…?」


所詮は、セフレ。

恋愛感情は持たないって、
最初に決めたのは俺からなのに。

バカらしい…なんて言われるだろうか。



「………す」

「え?」

「…おねがい、します…」


目にいっぱい涙を溜めているカズ。

景色がぐちゃぐちゃなんだろうか。
俺の服の袖をぎゅっと握り、
ずっと離そうとしない。


「…うん、付き合おう」

「っん、うん、」


初めて、カズと向き合った気がする。

今までセフレだから、と
どこかで割り切っていたんだ。


「好きだ、好きだよ」

「…うん、俺も好き…」


優しくカズの頬を撫でて、
そっと口付けた。

桜色の薄い唇に、
何度も何度も口付けた。


「…ぅ、ん、」


キスの合間に零れる吐息が、
いつもより色っぽくて。

肩に置いていた手を、
両頬に持ってきて包み込んだ。

上を向かせて、
無理矢理舌をねじ込んだ。


「っん!…ふ、ぅ、」


一瞬だけ、抵抗を見せたが、
すぐに俺に身を委ねた。

何度貪っても足りなくて、
何度愛しても足りなくて。


「好きだよ…」


唇を離してからも、
体を離していても。

愛を囁くことだけはやめられなかった。

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