
甘く、苦く
第89章 翔潤【純粋に】
このままじゃ、終わってしまう。
俺たちの関係が、
ぐしゃぐしゃになる。
だから、俺から切り出した。
「潤」
キッチンで洗い物をしている潤に、
いつもとは少し低めに声をかけた。
うん?と、背を向けたまま、
返事が返ってきた。
二回、深く深呼吸をした。
未だに振り返る気配のない
潤の背中を見つめて。
「少し、話がある」
ぴたりと止まってしまった潤の動き。
何かを、察したのか。
「なぁに?話って」
くるりと振り返り、
引きつった笑顔を見せた。
瞳には、不安の色が浮かんでいる。
俺は、別れようなんて言うつもりはない。
「違うよ、潤。
そんなに不安な顔しないでくれ」
「だって…」
「うん?」
「…ううん。先に話聞く」
「…そうか」
そういうところだ。
我儘を言ってくれていいのに。
本音を言ってくれていいのに。
どうして?
俺じゃ、不満があるのか?
