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甘く、苦く

第89章 翔潤【純粋に】



「ごめん、ちょっと強く言い過ぎた」

「ううん、いいよ」


いいよって言うくせに、
全然よさそうな顔してないじゃん。

そんな言葉を飲み込んで、
潤の目をしっかり見た。

少し戸惑いの色を見せた顔。


「…話って、なにかな」


未だに切り出せない俺を見兼ねてか、
潤から話しかけてきた。


「あのさ、」

「うん」

「俺になんか、言いたいことない?」

「…え?」


さっきより戸惑っている潤。

ぐっと下唇を噛んでから、
うるうるの瞳で俺を見た。


「…笑わないでね?」

「あぁ、笑わないから」


こほん、と咳払いをしてから、
俺の隣に腰掛けた。

それから、ぎゅ、と手を握られて。


「…さみしかった」


と、甘い甘い声で囁いた。


「…そ、か」

「うん」

「ごめん」

「ほら、謝ると思ったから…」

「近くにいるのに、気付けなくて…」


握られた手に力を入れて、
そっとキスをした。

唇を離すことが名残惜しかったけれど、
止まれない気がして離した。

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