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甘く、苦く

第89章 翔潤【純粋に】



翌週。

お互い、普段よりも遅めの起床だった。

潤よりも早く起きたのが、
純粋に嬉しかった。

いつも会社に先に行ってしまうのは潤で、
彼の寝顔を見ることなんてなかったからだ。

昨日愛した彼の体に手を伸ばした。

頬を背中に擦り寄せて、
肺いっぱいに匂いを吸い込んだ。

昨夜と同じ匂いがして、
クラクラした。

幸せだと思い、
こっそり笑っていた。


・・・


映画でも観よう、
と提案したのは先週の俺だ。

コーヒーを飲んで、
お互い時間を潰した。

肝心の映画を借りていなかったのだ。

だから、何も出来ずにいた。

それでも居心地は悪くなかった。

むしろ、有意義に過ごせていた。

俺はコーヒーを飲みながら、
新聞を読んでいた。

潤もコーヒーを飲みながら、
二宮から添削された資料を纏めていた。

最近彼は、豆にこだわっているらしく、
また味が変わった気がする。

味覚音痴の俺には
些細な変化はわからないが、
彼といるうちにわかってくるようになった。


「…終わったー」

「ん、お疲れ様」


潤がパソコンを閉じて、
メガネを外した。

俺は、潤がメガネを外す瞬間が好きだ。

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