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甘く、苦く

第89章 翔潤【純粋に】


予定は何も立てていなかった。

いつもなら有り得ない。

けれど、潤の希望だった。

“たまには無計画に過ごそうよ”

そう言われたから、
本当に何も考えていなかった。

だから

「え、今から出かけるの?」

潤が急に出かけると言った時は、
すごく焦った。

何も準備してないし。

しかも一人で行く場所があるらしい。

てか、もう六時過ぎだし…。


「今日じゃなきゃ、ダメなの?」

「うん、今日じゃなきゃダメなんだよね」


じゃあ行ってくる、と一言。


「え、ちょ、待っ…」

「大丈夫。すぐ帰ってくるから」

「……うん」


じゃあ、と言って、
キスをされた。

やけに甘いキスだった。

ドアが閉まってからも、
寒いのにその場から動けないでいた。

考えを巡らせてみる。

ケーキ?

プレゼント?

それだったら、何となくわかる。

でも、それなら二人でもいいんじゃない?

だって、すごく不自然だし。

恋人の誕生日に恋人を一人にさせるなんて、
よっぽどの事だ。

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