
甘く、苦く
第91章 モデルズ【思うがままに】
周りには隠してきたこと。
俺は、潤と付き合ってる。
付き合い始めたのは結構最近だけど。
「あのね、ホテル取ってあるんだ」
「っえ」
「この下の階なんだけどね」
照れ臭そうに笑ってから、
ポケットからキーを取り出した。
「飲むのは、部屋でいっか」
目の前の彼が、そう言うから。
俺は頷くことしかできなかった。
料理の味も、
美味しいんだろうけど
緊張のせいで味もわからなかった。
美味しいね、と言われても、
酔いが早く回ったのかよくわからない。
なんだか申し訳ないなあ、と思いつつ
未だに慣れない雰囲気に
くらくらしてしまう。
「お会計してるから、
座ってていいよ」
全額負担だなんて申し訳ない。
そう言っても、
今日は俺の奢りだから、
とスマートに交わされるだけだ。
ここは素直に、
うん、
と頷いておこう。
「お待たせ」
さ、行こう。
人目も気にせずに、
行き場を失っていた俺の手を取り、
優しく微笑みかけてくれた。
ああ、バカみたいだ。
なんでこんなにも、
期待をしてしまっているんだろう。
