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甘く、苦く

第39章 大宮【それはやっぱり君でした】

元気だけが取り柄と言った。


あの日、君の時計が毀(こぼ)れて
どれほど君の背中が小さく見えただろう。






得意でもないのに君のために食事をつくって。


君の好きなものを並べてみても、
ちっとも減らない…


それにも…慣れたよ……


今度こそ、旨いもの作ったら
君は食べてくれるのかな…?


淡い期待に頑張ってたんだ。




君には見えて僕には見えない。


不公平だなって。


酔っぱらった勢いで


「狡いよ…」


って呟くのは寂しいから。




どうかな?少しは変わったのかな。


『だらしなくなってきた?』


窓風の隙間から流れ込む風に乗って


「カズは…相変わらずだ」


と君の聲が貸すかに響いた。


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