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甘く、苦く

第42章 磁石【先生と俺】

櫻井side




まあ、二宮はかわいいと思う。


普通に。


女子らしいっつーかこれだけ
拒否ってんのにめげないとことか。


健気なんだよな。


だから、止まれなくなるときも
あるわけで……。


あんなことしちまった。


保健医失格だぜ?


「先生、どうしたんですか~?」



のんきな声の主、相葉。


今一番関わったらアウトな奴。



「ひゃひゃひゃ、また隠れて
煙草吸ってる~」

「うっせぇな、お前に言われたくねぇよ
屋上サボりに来てんじゃねーよ」



相葉は「えー」って不満げな声を上げて
仲間とどっか行った。



……ほら、普通高校生って言ったらさ、
仲間や恋人と楽しく過ごすだろ?


なにが悲しくて保健医となんて
関係持つんだよ。


あいつの思考回路がわからねぇ。


まあ、即アウトだったんだけどさ。


受験発表のとき、あいつに初めて会った。


瞳を潤ませて母ちゃんに抱きついてよ、
姉ちゃんから頭わしゃわしゃされてた。


幸せそうな家族だなって
羨ましがってたのかもしれない。


「……行くか」


吸殻を処理して保健室に向かう。



――ハズだった。

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