
甘く、苦く
第46章 磁石【move on now】session1
「二宮、悪かった…
すまん、出てきてくれ」
ガチャっと鍵の閉まる音が聞こえた。
それと同時に、ドタっと
何かが倒れる音がした。
…まさか、二宮……
嫌なことが頭を過った。
いや、まさかな?
ドアスコープを覗いたら、
玄関先で二宮が倒れていた。
…やばい。
俺は管理人さんに連絡を入れて、
鍵を開けてもらった。
「二宮っ」
倒れている二宮は
ぴくりとも動かない。
「二宮っ、起きてくれ!」
俺と管理人さんは
二宮を病院に連れていくことにした。
あぁ、俺が邪魔しなかったら、
こんなことにはならなかったのに。
もう、お前とは関われないかもしれない。
関係ないのに、隣に住んでるからって
首突っ込んでごめん。
「栄養失調ですね。
こんなに痩せて…」
…栄養失調。
あれだけ金があるのに、
なんで使わないんだ?
「入院、とかは…?」
「あぁ、その心配はありませんよ
二、三日様子を見てください。
異変があれば、また来てください」
そう言って医師は
優しく笑った。
「はい、ありがとうございました。」
俺と管理人さんは医師に
お辞儀をした。
…さて、これから
二宮をどうするか、が問題だ。
「櫻井さん、お願いできます?」
「…はい。わかりました。」
だろうな。
二宮は知り合いがいない。
学校にだって行ってないんだろ?
…俺しか、いないのか?
客、とはなんのことなんだ?
俺は二宮の家の鍵を管理人さんから受け取った。
俺と二宮の同居生活が始まった。
