
甘く、苦く
第46章 磁石【move on now】session1
「え、それって、本気?」
「本気本気。
和くん、一人だと寂しいでしょ?」
…なんでわかるのかな。
あー。もう。
まーくんの馬鹿。泣いちゃいそうだよ…
「ありがとう、まーくん。
けど、大丈夫だよ」
「そっか…そーだよね!
変な話してごめんね?
じゃ、また今度!」
そこで一方的に
電話が切れた。
…どうしよう。
今、すごくドキドキしてる。
まーくんと…一緒に暮らす。
それはきっと楽しいんじゃないかなって。
もう、遅いんだよ、相葉さん。
今は……おにーさんがいるから…
「…おにーさん…」
洗濯カゴに入ってる
おにーさんの黒いTシャツ。
…いい匂い。
俺はしばらく、そのいい匂いのする
黒いTシャツに顔を埋めていた。
「うー…届かない…」
引っ越すときまーくんに
手伝ってもらったんだけど…
相葉さんみたいに背が高くないから
全然届かない。
もー、まーくんったら。
「…椅子」
椅子に乗ったら届くかも。
そう思って椅子を持ってきた。
…届かない。
まーくん、奥に押し込みすぎだよ。
…あ、やばい。
ちょっとフラフラしてきちゃった…
…少し寝ようかな。
少しだけ。
おにーさんが帰ってくることを願って。
