
甘く、苦く
第46章 磁石【move on now】session1
「…さて、どうするか」
二宮の家に着いたが、
部屋に入れない。
…鍵、あるんだから
入ったって犯罪者には
なんねぇよな?
「おにーさん…遅かったね」
「うぉっ!いたのかよ!」
時刻は七時半。
二宮の頬はピンク色に染まり、
瞳はなぜか、潤んでいた。
「二宮…?」
「はぁ、おにーさんが
帰ってこないかと思った…」
二宮は俺に体を預けた。
妙にドキドキした。
ま、まあな?
抱き付かれるなんてことは
滅多にないもんだからな?
「おにーさん、簡単なものしか
作ってないけど、いいかな…?」
「は!?寝てろっつっただろ!?」
俺が怒鳴ったら二宮は
「ごめんなさい」って小さくなった。
…そうだ。
コイツはまだ高校生だ。
「すまん、怒鳴った。
体調は、悪くないか?」
「…怒った後に優しくするとか、
おにーさん…ずるいよ、馬鹿。」
二宮は俺に抱き付いて
上目遣い気味に見上げた。
「にーのーみーやー!
はーなーれーよーやー!」
「嫌だっ!おにーさ…
櫻井さんと一緒がいぃ…」
少しずつ小さくなっていく
二宮の声。
少しだけど、
俺に打ち解けてくれた証拠。
「二宮、ありがとう」
二宮の頭をポンポンっと撫でた。
「こ、子供じゃないしっ///」
顔を赤くして俺から離れた二宮。
…さっきまであった温もりが消えた…。
