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甘く、苦く

第47章 翔潤【Happiness of the from】

松本side




――あれ?



重い瞼を開けると
そこは見慣れた天井。



…あ、そうか。


昨日俺、翔さんと
体を重ねたんだ。



思い出した途端、
顔がぼっと熱くなる。



寝室の冷たい扉を開けると
ふわっと漂ういい香り。



………って、え?



翔さんがいるんだよね?

なのに、何でいい香り?







……なんかの化学反応でも起きて
そういう匂いになっているとか?



頭にハテナマークを浮かばせながら
俺はリビングに足を向けた。



「ぅあっち!!」



物凄い声がしたから
キッチンを覗くと、
パンを焼いてる翔さん。



「あ、潤…」

「おはよ」



にこっと微笑みかけると
翔さんは綺麗に焼けたパンを
お皿に乗せた。



……そうか。

いい匂いの正体は
程よく焼けていたパンなんだ。


まあ、翔さんでもパンくらいは
焼けるよなあ。



「ちょ、そこのフライパンの…」

「あーっ!」




翔さんは慌ててその卵を
かき混ぜた。


スクランブルエッグ(仮)が
お皿の上に乗る。



…少し焦げてる。



「あーあ、フライパン
汚れちゃったよ…」

「うぅ…すまん……」



翔さんはコーヒーを淹れながら
俺に謝る。


…もー、いちいち謝んなくて
いいんだけどなあ。



「大丈夫だよ。
ほら、俺もよく失敗するし?」

「…そう、だよな!

今回は仕方ない!」





…立ち直るの早い。


これも翔さんの
いいところ、かな。




「潤、食べ終わったら――「俺洗っとくよ」



トーストを口に運びながら
翔さんに言う。


…だって翔さん、
寝巻きのままなんだもん。



「お、さんきゅ」

「はーい」



翔さんがお皿を重ねてから
席を立った。


ふふ、細かいことも
嬉しいな。



今までの翔さんなら
食べたまま、置いたまま。


だったけど、付き合って同棲するようになったら
食べたまま、置いたまま、はなくなった。


些細な気遣いも、
すごく嬉しいんだよ。

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