甘く、苦く
第49章 磁石【move on now】session 2
「二宮…」
「なに。」
「可愛い。」
そう言って俺の頭を
優しく撫でる櫻井さん。
「可愛くないし。」
「だぁーかぁーぁー、
そう言うのが可愛いの。
分かれよ。」
「分かんねーし。」
櫻井さんの大きな手が
俺の頬を優しく揉む。
くすぐったくって、
目を瞑ったら、唇に
柔らかくて優しい感触。
「…馬鹿。」
「馬鹿で結構ですー。」
…薄汚い親父たちとは違う、
優しい気持ちになれるキス。
…櫻井さんは…こんな俺を
選んでくれたんだ。
「…二宮、泣くなよ。」
「っいてなんか…ないしっ」
「…泣いてんだろ。」
櫻井さんにぎゅーっと
抱き締められて苦しかったけど
笑顔になれた。
「泣いたら笑うんかよ。
どっちかにしろよな。」
「うるさあい。」
俺は櫻井さんに抱きつきながら
しばらくそのまんまでいた。
…あ、いい匂い。
俺と同じ匂いのする
櫻井さんが好き。
てか、俺が櫻井さんと
同じ匂いなのか。
「…二宮、朝飯食う?」
「なに?食べるなって言うの?」
「聞いてんだよ。馬鹿。」
「…いい、食欲ないし。」
俺がベッドから降りようとしたら
櫻井さんにひき止められた。
「な…」
振り向いたら、
そのまんまキスされた。
ちゅっとくっつけて、
すぐに離すようなキス。
ほんの秒間だったけど
長く感じられた。
「…腹減ったら
ちゃんと言えよ。
棚にカップ麺あるから食え。」
「…俺、栄養失調で
一回倒れましたけど?」
「俺、料理できない。」
「……。」
自分で作るしかないってことね。
櫻井さんに作らせたら
ほんっとに危ないから。うん。