甘く、苦く
第49章 磁石【move on now】session 2
食器を片して、
掃除洗濯して。
ちょっと綺麗になった
櫻井さんの家でコーヒーを
飲んで寛いでいた。
「んー…」
こういう時間、
案外好き。
ここにゲームがあったら
もーっともっと最高。
俺がスーパーのチラシを
見ながら買う物を決めてたら
櫻井さんからメールが届いた。
『弁当忘れたから届けて。』
…何で忘れるんだよ。
テーブルの上に
置きっぱの弁当。
…コンビニとか売店で買うと
高いもんね。
てか、櫻井さんの会社
ってどこなの?
『櫻井さんの会社どこ?』
メールの返事はすぐにきた。
『○×保険会社』
…え、俺でも知ってるよ?
いや、普通の人は知ってるか。
てか、めっちゃ大企業じゃん。
えー、すご。
櫻井さんって
案外すごいんだ。
…そうだ。
櫻井さんの会社に弁当届けて
それからスーパーに寄ればいいや。
そうしよっと。
俺は着ていた服を脱いで
ちょっと大きいパーカーを着た。
櫻井さんの弁当もって、
お財布もって鍵もって
エコバッグもって…。
よし、完璧。