甘く、苦く
第49章 磁石【move on now】session 2
家について、
冷蔵庫の中に
食品をいれる。
…やっぱり櫻井さん、
賞味期限切らしてるの
たくさんある…。
危険だ。
「もー…。」
俺はそう言いながらも
笑顔だった。
だって、櫻井さんのことを
またひとつ知れたから。
知らないまま
付き合うなんて
俺は嫌だから。
ある程度
知っておきたいんだ。
「…よし。」
これで終わり。
お散歩…行ってこようかな。
…あ、大野さん…。
どうしよ。
お礼くらい、しておいた方が
いいんだろうけど…。
でも今行ったら
大野さんに襲われそう。
…うーん。
どうしようかな。
ちゃんとお礼はしようかな。
「…大野さーん。」
「ほーい。」
大野さんちに行ったら
少し片付いていた。
…引っ越しでもするのかな。
「大野さん…」
「んー?」
「引っ越すの?」
「…んー。」
ちょっと苦笑いして
俺の頭を撫でた。
「二宮くん、寂しい?」
「いや、別に…」
「ちょっと遠いとこまで。
会社で人事異動になっちゃってさあ…。
ほんとは今のままで
よかったんだけど…。」
「へぇ…。」
俺はお茶を飲みながら
大野さんをじっと見つめた。
大野さんは俺の頭を撫でて
「心配すんな。」
って、優しく言う。