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甘く、苦く

第49章 磁石【move on now】session 2






「ずーっと探してたんだぞ。
みんなみんな、心配してた。」

「…違う…
人違い、ですよ…」



俺が手を振り払ったら、
ソイツはくっくと笑い始める。



「そういうとこ、
変わってないなあ。

和也の反抗的な目
俺、大好きだよ?」

「や、だ…」

「やだって…酷いなあ。
家族でしょ?」

「嫌だ…違う。
家族なんかじゃない。」



俺の方に向かってくるソイツを
突き飛ばして俺は走った。

櫻井さんに会いたくて。

こんな奴じゃなくて…。



櫻井さんの会社に向かって
走って走って…。


だけど、だめだった。



「和也、捕まえた。」

「…して…」

「え?」

「離してってば!」



力では敵うはずないのに、
俺は無力な抵抗をした。


そのうち、ずるずると引き摺られ
来たくないところに連れていかれた。



「おかえり。和也。」

「やだ…違う。」



その家の表札には
"和也"と書かれていた。


血なんて、
繋がってないのに。

母さんの再婚相手の
子供が…潤だったから。

母さんの名字が松本になって、
俺の名字も松本になって。


せっかくこの家から出て
二宮に戻っても…。

また、松本に戻されるのかと思うと
吐き気がする。



「ほら、突っ立ってないで
家に入ろうよ。ね?」

「…嫌だ…」

「和也、母さんたちは
今いないんだよ?

こんなチャンス、
逃しちゃだめでしょ?」

「…っ。」



嫌だ。

コイツは狂ってる。



「ねぇ、シよ?」

「嫌だ…。」

「なに?彼氏でもできたの?」

「…っ…。」

「図星?」



潤は俺を抱え上げて
家の中に入っていった。


あぁ、櫻井さん、
ごめんなさい。

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