甘く、苦く
第49章 磁石【move on now】session 2
いつもの道を五倍くらいで
走ったらまだ家には二宮がいた。
「櫻井…さん。」
「二宮…よかった…。」
二宮を抱き締めたときに香る、
いつもと違う匂い。
太股に伝う白く濁った液。
俺は男だから、
その液がなにかは
すぐにわかった。
「二宮…怖かったな。」
「…うん…。」
俺は自分が情けなくて、
涙が出てきた。
「俺、汚れちゃったよ…。」
「二宮は汚れてなんかいない。
二宮を犯した奴の方がよっぽど
汚れてるから…。」
俺は二宮を抱き締めながら
耳元で優しく囁いた。
「…櫻井さん、シよ?」
「え?」
「…だから、セックス。
忘れさせてほしいの。」
二宮は俺をベッドに連れていき、
横になった。
俺を見上げる瞳は
まだ澄んでいて。
とても綺麗だった。
「…二宮の体に負担を
かけることは…したくないから。」
「負担なんかじゃない。
…櫻井さんは…好きな人と繋がることは
気持ち悪いって思ってる?
それとも、俺が汚れてるから
シてくれないの?」
二宮の頬に伝う、
一筋の涙。