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甘く、苦く

第50章 お山【君のためにできること】

櫻井side



「翔ちゃぁん…。」

「んー?」



新聞を見ながら返事をしたら
後ろからぎゅっと抱きつかれた。



「…さとっさん?」

「今日、面白いニュースある?」



耳元で囁かれ、
顔が熱くなった。

そんな俺の反応を楽しむかのように

「ねぇ…」

って吐息混じりに聞いてくる。



「や、特にはない…」

「ふぅん…。」



お風呂上がりだからか、
触れる肌がしっとりとしていて
髪の毛が少しだけ濡れていた。


「さとっさん、ドライヤーで
ちゃんと乾かさないと…。」

「じゃあ、翔ちゃんがやって?」

「えっ?」

「嫌なの?」

「…嫌じゃない。」


なら行こって俺の手を引っ張り
洗面台に連れていかれた。


「じゃあお願いね~」


自分のはまだしも、
人のなんてしたことなくて。

こういうの、俺より潤の方が
得意そうだし。

かと言って、
潤を呼び出すわけにはいかなくて。


「んー、気持ち~。」


にへって笑って
俺に抱きつく。


…あ、いい匂い。


清潔な石鹸の香り。

思わず匂いを嗅いでた。


「翔ちゃん?
なにクンクンしてるの?」

「え、あ、いや…」


自分のしたことを指摘され、
恥ずかしくなる。


…てか、抱きつかれてると
髪の毛乾かせない。


「さとっさん、少し離れて。」

「はーい。」


お、物分かりいいじゃん?

そんなこと思ったけど、
さとっさんが動いたのは
ほんの数センチだけ。


「……。」

「ん?」

「いや…。」


…これは、仕組んでるのか、
それとも天然なのか…。


俺には全く理解ができない。

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