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甘く、苦く

第50章 お山【君のためにできること】

大野side



「翔ちゃん、一緒に寝よ?」

「あ、俺やることあるから
先に寝室行ってて。」

「ちーがーうー!
翔ちゃんと一緒に行きたいの!」

「んー、ちょっと
くらいいいじゃん?」

「よくない!」



俺が頬っぺたを膨らませながら
そう言ったら翔ちゃんは
困ったような顔をした。


「ごめんね。だけど、今日中に
やらなきゃいけないんだ。

だから…ね?我儘言わないで。」


言いながら、俺の頭を
優しく撫でる翔ちゃん。


…翔ちゃんは、わかってない。


「我儘なんて言ってない!
我儘言ってるのは翔ちゃんでしょ!」


翔ちゃんの眉がぴくっと動く。

あ、言い過ぎた…。って
身を小さくしたら、
包み込まれるように抱き締められた。


「ごめんね。我儘言って。
だけど、仕事だから…。

さとっさんなら
わかってくれるよね?」

「…うん。」


俺が頷いたら、
翔ちゃんは笑顔になって
さっきより強く抱き締めてくれた。


石鹸の香りと、
翔ちゃんそのものの
香りが俺の鼻孔をくすぐる。


「寝室まで
ついてってあげるから…。

ほら、行こ?」

「うん。」


翔ちゃんの手を握って
寝室まで来た。


翔ちゃんは「おやすみ」って
言って、ベッド脇のライトを消した。


…静かだ。


でも、静かだから、
眠気はすぐに襲ってきた。

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