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甘く、苦く

第50章 お山【君のためにできること】

大野side



「ごめんね。相葉ちゃん。
これから仕事に行くのに…」

「いいっていいって。
困ったときはお互い様でしょ?」

「…うん。」



このときほど、相葉ちゃんを
頼りになると思ったことはない。

…かもしれない。



「仕方ないよ。
翔ちゃんも疲れてたんだよ。
そういうことにしておこう?

じゃあ俺、行ってくるから。
なんかあったら電話して。
いつでも構わないから。」

「うん。」



玄関で手を振る相葉ちゃんに
俺は微笑んで手を振り返した。


ぱたん…と音を立てて
ドアが閉まる。


静かになったリビングで
俺はぼーっとしていた。


寂しい、とか、悲しい、とか
それ以前の問題で。


「…どうしよ。」


謝ればいいのかわからない、
俺が悪いのかもわからない。


翔ちゃんの気持ちも、
全っ然わからない。


そんな自分が情けなくて、
涙が溢れ出た。

もうわかんなくて。

不安と痛みに押し潰されそうで。



俺が俺じゃなくなる。



翔ちゃんとの関係も
終わりかもしれない。

どんなに愛していても、
終わりは来るんだから。

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