テキストサイズ

甘く、苦く

第50章 お山【君のためにできること】






思考が停止されて、
何が起こっているのか
理解不能な状況に陥る。


…なんで?

なんでここにいるの?


わかんない。



「ねぇ、帰ろ?」

「…あ、う…」



何て答えればいいのかわからなくて
翔ちゃんの顔を見つめたまま固まった。


…なんで?どうして?

俺のこと、嫌いになったと思ったのに。



「…帰ろう?」



翔ちゃんに手首を掴まれた。

優しいけど、ちょっと痛い。



「…さとっさん。ねぇ?」

「…帰れば?」

「え…?」



自分の口から出た言葉に
驚いてるのは俺で。


言うつもりないのに、
いっぱい出てきちゃう。

本当は迎えに来てくれて
嬉しいのに。

翔ちゃんに抱きつきたいのに。

ちゅーしたいのに。



「帰んない。
帰るならさとっさんも一緒。」

「…っ」



玄関に座る翔ちゃん。

相葉くんちは綺麗だねー
なんて、俺の世界一大好きな
笑顔で言うもんだから…。


ぎゅううっと翔ちゃんを抱き締めた。



「…翔ちゃん。」

「んー?」

「…ごめんなさい。」

「ふふ、」



翔ちゃんの顔を覗き込むと、
すっごいニヤけてて。


恥ずかしくなって
翔ちゃんから離れた。



「なんで離れるの?」

「だっ、て…っ。」



顔を真っ赤にさせて
口をパクパクさせてると、

翔ちゃんは満足そうに
微笑むんだ。


「照れちゃったの?」

「っんなわけ…なくもない…。」


最後の方は自分でも言ってるか
言ってないかくらいの大きさで。


「~…っ!もー!
翔ちゃんの馬鹿~!」


ぎゅーっと抱きついて、
翔ちゃんの温もりを感じながら
瞳をゆっくり閉じた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ