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甘く、苦く

第51章 櫻葉【ふたりの休日】

櫻井side



「翔ちゃん、おかえり。」

「ただいまー♪」



家に着いてすぐ、
迎えてくれるのが恋人の雅紀。

緑のストライプ柄のエプロンが
超似合ってる。


むぎゅーっと抱きつくと、
お風呂に入ったあとなのか

ふわっと香るいい匂い。


この匂いに包まれていたくて

俺は雅紀から離れられずにいる。


「翔ちゃん、俺、臭いよ?」

「んーん。
風呂入ったあとだろ?」

「え…入ってないよ?」

「え!?」

「だぁーかぁーらぁー、
入ってないって。」




…マジか。

それでもこんなに
いい匂いって…。


「…だから、俺臭いの。」

「そんなことないよ!
めっちゃいい匂いするもん!」

「あ、香水かなぁ?
ほら、この前ニノに貰ったの。」



……ニノに、ねぇ。

その言葉に耳が反応して
ぴくっと動いてしまった。


雅紀はそんな俺の気持ちを
知ってか知らずか、

ペラペラと喋り続けている。



…嫉妬、するだろ。
馬鹿。



「でねーニノが「もういい。」



さっきまであんなにデレてたけど、
ニノの話ばっかりされたら
こっちは気分が悪い。


雅紀の横を通り過ぎて
スーツを脱ぐ。



「手伝おっか?」


気を利かせて
俺のネクタイを外そうとした雅紀。


「いいってば!」




反射的に振りほどいてしまった。



あ…、やば、やっちゃった。

そんなことを思ったときには
もう遅くって。





「ごめんなさい…」


そう言って寝室に閉じ籠った。



振りほどいたとき、
びっくりしてた。

けど、すぐ歪んで。


苦しそうで、辛そうで。

そんな顔にさせたのは、
俺なんだから…。



「雅紀、ごめん…」



寝室は鍵をかけられていて
開けることができない。

軽くノックしても、
合間に聞こえるすすり泣く声が

耳から離れなくて。

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