甘く、苦く
第51章 櫻葉【ふたりの休日】
ああ、もう俺ってヤツは…。
自分に呆れてしまう。
勝手に嫉妬して、
雅紀を傷付けて。
辛かったろうに、
苦しかったろうに。
振りほどいてしまった感触が
まだ残っている。
それは空想の世界なんかじゃなくて
現実の世界ってことを
嫌でも表している。
すすり泣く声が
少しずつ小さくなってきた。
泣き止むかもしれない。
泣き疲れて
眠ってしまったかもしれない。
どっちにしろ、
今日は雅紀と寝ることができない。
……仕方ないか…。
俺がそういう風にさせたんだから。
「…雅紀、おやすみ。」
少し残念な気持ちで
風呂場へ向かった。
いつものように少しぬるめの
お湯が張ってある。
雅紀は俺の好みをわかってくれる。
メンバーでもわからないことも
雅紀だけは知ってるから。
そんな雅紀を傷付けた
自分が許せなくて。
罪悪感と劣等感。
ごめんって素直に言えたら。
いや、言ったけど。
それでも、俺がもうちょっと
粘ればこれは解決したことなのに。
まさか…。
まさかこんなことになるなんて
思いもしなかったから。