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甘く、苦く

第51章 櫻葉【ふたりの休日】






次の日は珍しく早起きした。

寝癖は相変わらずだ。



「…はぁ。

あぁ、もう…。」



昨日は結局なにも食べずに
風呂だけ入って寝たから

テーブルの上の雅紀が作ってくれた
美味しいご飯が嫌でも目に入る。




もう冷めきってしまっていて、
ラップには水滴が
いくつもついている。


なんだか申し訳なくて。


居ても立ってもいられなくなって。


寝室にもう一度向かった。



「…雅紀、おはよ。」



寝室からはなにも聞こえない。

まだ寝てるのかもしれない。

今回の喧嘩は
延長戦になりそうだ…。



いつもなら、ごめんねって
俺が言うと、

「仕方ないなぁ。」

ってヘラヘラ笑って
許してくれる雅紀。


俺より心が広くて、
いいヤツ。


そのいいヤツを怒らせた
俺は最悪なんだろうなぁ…。

はぁーっとわざと
大きく溜め息をついてみる。


…反応なし。



「雅紀、今日仕事でしょ?」



うん。これだ。

今日は仕事だから
嫌でもここから出なくてはならない。



「…雅紀、サボるの?
スーパーアイドル相葉ちゃんでしょ?
みんなの…」


そこでやめた。

『みんなの相葉ちゃんでしょ?』


喉元まで出掛かったこの言葉。



本当はみんなのじゃなくて
俺だけの雅紀でいて欲しい。

でも、職業柄、
それは許されないことだから。



「みんなと…俺の相葉ちゃんだろ?」


これでどうだ。


だけど…。

やっぱり、反応はない。

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