テキストサイズ

甘く、苦く

第52章 翔潤【曖昧love】






次の日の朝、
隣の翔くんはいなくて。


寝室から廊下に出たら、
ちょっと焦げ臭い匂い。


「あっつ!」


…あっ。

翔くん…朝ご飯作ってくれてんだ。

…じゃなくって!


「…あ、潤。
おはよー。」


キッチンに行くと、
爽やかな笑顔の翔くんの
手に握られているフライパン。

…の横にある真っ黒な卵焼きと
おぼしきもの。



「…それ、どうしたの?」

「え?…あー。
事故だよ、事故。
寝惚けててさぁ?」

「……。」


さー、食べよ。って
真っ黒な卵焼きとおぼしきものを
テーブルの上にご飯と並べている。

……え?


その異様な光景に
目を疑った。

それ、俺が食べるの?


いつも俺が座る席に
きっちりと置いてある。


「翔くん、これ何?」

「ん?卵焼きだけど?」


それがどうかした?って
首を傾けて笑う。


……あぁ、もう。

その角度で首を傾けるの、
俺が弱いのを知っててやるのかな。

知らないんだったら、
尚更タチが悪い。


「…食べないの?」


しゅーんっと
怒られた子犬みたいな
瞳で俺を見つめる。

…うっ。


なんだよ。
俺が悪いみたいじゃないか。

俺、なにもしてないし。


そもそもこれ、卵焼きなの?



「…食べてくれないの…?」


震えていて、掠れてる声。

これ以上行くと、
泣いちゃいそうだから。


「今、食べるから!」



ほんと?って潤んだ瞳で
俺を見つめる天使。




…可愛いな、おい。

卵焼きを食べてみると、
案外美味しかった。

見た目より…
味が大事だよな。うん。


「これ、美味しいね。」

「ほんと!?
ありがとー♪」


ふふって可愛らしく笑うその姿に
俺は鼻血が出そうになった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ