甘く、苦く
第52章 翔潤【曖昧love】
拳をぎゅっと握り締め、
俺を睨んでる翔くん。
「翔く…さん。」
「…先に帰んなよ。」
「え?」
「だから、先に帰るな!
俺と一緒に帰れ!
…じゃなきゃ、許さない。」
……うそ。
翔くんはごめんねって付け足して、
俺に抱きついた。
温もりがダイレクトに伝わる。
「ずーっと…謝んなきゃって
思ってたけど、できなくて…。」
「ううん。
俺もごめんね…」
翔くんのジェルで
セットされた髪を
優しく撫でた。
久しぶりのこの感触。
この香り。この声。
すべてが…。
今、俺の傍にある。
「…潤、大好きだから…」
久しぶりの潤。
「翔くん…帰ろ。」
「うん…。」
車の鍵を開けて、
翔くんを助手席に座らせる。
隣に人がいる。
それだけで、俺の心は
あったかくなる。
潤、潤って懐かしい声。
離れて数週間しか経ってないけど、
もう何年も離れてた恋人みたいに
俺たちは語り合った。
潤がいなくて寂しかった。
それは俺も。
ほんとに?
うん。翔くんがいなきゃ俺、
なんにもできないもん。
ふふ、潤ったら…。
そう言いながら
俺の大好きな角度で
首を曲げる翔くん。
…あぁ、もう。
今夜は覚悟しててね。
離れてた
空白を埋めるんだから。
たっくさん愛し合おう。