甘く、苦く
第53章 磁石【move on now】session 3
とくんっとくんっと
優しい心音。
翔さんの匂いと、温もり。
その二つがあるだけで、
安心感に包まれる。
俺って、やっぱり
幸せ者なんだなぁって。
この広い世界で、
翔さんに会えたこと。
出逢える可能際はすごく低かった。
だけど、運命の人に出逢えた俺は、
幸せ者なんだ。
「かず、寝よう?」
「…うん。」
二人ともほぼ全裸のまま、
布団を被った。
ぎゅっと目を閉じると、
額に柔らかい感触。
目を開けたら、
翔さんの視線が重なった。
「翔さ…」
甘くて、優しいキス。
それは、唇だけじゃなくて、
額や首、腕、お腹にも。
「かず、大好きだよ。」
そう優しく微笑む翔さんは、
どこか寂しそうだった。
この幸せが崩れるのに、
そう時間は掛からなかったんだ。
だって、最初から決まってたんだ。
この関係は………
崩れるって。
そんなことまだ知らない俺は、
翔さんにくっついて、
夢の中に飛び込んだ。