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甘く、苦く

第55章 にのあい【俺だけのDisco Star】






俺が一番、
雅紀を知ってる。

時折見せる、
悲しそうな表情、とか。

元気一杯の明るい表情、とか。


……好き、なんだよな。

雅紀のお陰で、
一歩踏み出せているような気がする。

だって、雅紀だから。


「…ニノ?」

「ん?」



いつも通り、スマホを
弄りながらの返事。


「…今日、行っていい?」

「…いいけど。」

「なーに!?
二人で密会!?」

「そんなんじゃないよっ」



翔ちゃんのバカーって
雅紀が頭を叩いている。

…うん。



長くて綺麗な指とか、
おっきな手のひらとか。


全部全部、俺の好きなもので
溢れてる。


もう少し、あと少しだけ。


俺に勇気をください。





「スタンバイお願いしまーす」


スタッフの声で、
我に返った。

どうやら、ずっとぼーっと
していたようだ。


「ニノがぼーっとするなんて
珍しいじゃん?
具合でも悪い?」

「あー、だいじょぶ。」



潤くんに苦笑いを向けて、
席を立った。

自分の体調が、
ベストじゃないことなんて
知ってる。



無理しないでね、なんて
気持ちのこもってない言葉を
投げ掛けられた。


「…うん。」



ひねくれてる俺には、
十分すぎる言葉なのに。

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