甘く、苦く
第56章 翔潤【隣にいたい】
ほら、俺さ、和みたいに
可愛くないじゃん。
自分で言うのもあれだけどさ、
カッコいい方じゃんか?
だから、翔くんの隣にいると、
怪しまれるわけ。
『アイツら、デキてる。』とか。
俺はそういうこと言われても
流せるけど……
学校で評価の高い翔くんが
そんな趣味だと、
みんなから軽蔑される。
俺はどうなったっていい。
軽蔑されても、
いじめられてもいい。
……だから、翔くんだけは。
翔くんにだけは、
傷付いて欲しくない。
だって、大切だから。
「潤、遅いよ。」
「ごめんね、翔くんっ…」
「いーよ。
全然平気。」
そう言って、
爽やかに笑う姿は
誰でも好きになっちゃうんだろうな。
……だって、
男の俺でも好きになるんだから。
女の子が好きになるのだって、
……わからく、ない。
ていうか、女の子の方が
受け入れてくれるもん。
…なんでこの世界は、
男と男を
受け入れてくれないのかな。
「って、潤、聞ーてる?」
「へっ?
な、なんだったっけ?」
「…疲れてる?」
「ん、ううん!
そんなことないよ!」
とびきりの笑顔を
見せたつもりだったけど。
「悩んでることあるなら、
言ってよ。」
「…ないよ。」
「嘘だ。」
翔くんは、小さい頃から
なんでもお見通しで、
なんでもわかっちゃうんだもん。
…ズルい、よ。
「…ごめん、翔くんっ!
ちょっと走ってくる!!」
「は?…おいっ」
翔くんの止める声が
聞こえる前に、
もう走り出していた。