甘く、苦く
第56章 翔潤【隣にいたい】
…俺が持ち合わせてる
言葉なんかじゃ表現は
難しくって。
なんて言えばいいんだろ。
…わからない。
「しょおくん…」
お湯に浸かったまま、
目を瞑り、
翔くんの爽やかな笑顔を
思い出していたんだ。
……もしかしたら、
可能性はあるかもしれないんだ。
…ふふ、嬉しい。
勘違いかもしれないけど、
それでも、愛おしくて。
もっと…近付きたい。
恋は、気付いたら
止まれなくなってるんだ。
翔くんに依存しちゃってる。
多分。
「…ねぇ、母さん。」
「どうしたの?」
「……お願い、あるんだけど。」
翔くんと同じ立場になるなら、
もっと、頭よくなくちゃ。
「珍しいじゃない。
参考書が欲しいなんて。」
「どんなのがいいかな。」
…俺じゃわかんないから。
「そうねぇ…。
翔くんにでも聞いたら?」
…そう!
その言葉を待っていたんだ!
「…そう、だね。
じゃあ、今度の休みにいくから、
お金ちょうだいっ!お願い!」
「はいはい。
無駄遣いはしないようにね。」
母さんが俺の手に
諭吉さんを乗せた。
「こ、こんなにいいの?」
「翔くんと行くんでしょ?
ご飯でも食べに行ったら?
それに…参考書って、
案外高いじゃない。」
…なんて、言う。
……今日ほど、
母さんに感謝をした日は
なかったかもしれない……