甘く、苦く
第56章 翔潤【隣にいたい】
可愛いっていうのは、
男にいうのは
おかしいかもしれない。
……うん。
でも可愛い。
弟っつーか、…うん。
そんな感じだと思うな。
「翔くん、お待たせっ」
「おー」
私服姿にドキッとするとか、
俺らしくない。
今まで何度見たか
わからない潤の私服。
俺…ほんとどうしたんだろ。
こんな気持ち、
おかしいのに。
「翔くん……?」
「ん?」
「疲れちゃった?」
「いや、そんなことないよ。」
いつもみたいに
微笑みかけた。
そしたら、潤も
いつもみたいに笑った。
「……かわい。」
…あ。
思わず声に出てしまった
俺の言葉。
「え?なにが?」
「こっ、この!
ほら、人形!!!
可愛くない?なんか。
ほら…智くんみたいで。」
「…うん。」
…あ、やっぱり、
俺のテンパり方、
不自然だったかな…。
つか、なんだよ。
可愛いって。
おかしいだろ。普通。
どうしたんだよ、俺。
「ほっほら、本屋着いたよ。
早く行こっ」
潤の左手を握り締め、
本屋に入る。
「…これとか、
いいんじゃない?
ほら、これも…って、
潤、聞いてる?」
「へ?え、あ、ごめん。」
さっきから、
ボーッとしている潤。
…やっぱり、俺、おかしい。
なんで、あんな言葉…
「…翔くん、ごめんね。
せっかく付き合ってくれたのに…」
[付き合う]
その言葉に反応してしまう俺。
…違う。
別に、そんな疚しい意味はない。
だって、潤がそんなこと…
ていうか、なんで俺はこんなに
悩んでるんだっけ?
別に、潤が好きな訳じゃないのに
なんでこんなに意識してるんだ?
周りの目とか、潤の行動、言動、
すべてを。
おかしいじゃん。
俺、どうしたんだろ。