甘く、苦く
第56章 翔潤【隣にいたい】
暑さにやられたんだろう。
そうしておこう。
…だけど今年は、
比較的涼しい。
去年の猛暑とは違い、
過ごしやすい。
「翔くん、どうした?
体調、悪い?」
「えっ!?
そ、そんなことないよ?」
参考書、選んでやりたいけど、
字を見ていると
頭がくらくらしてくる。
さっきまで潤がぽーっと
していたけど、
次は俺だ。
あー、ほんと、どうしたのかな。
「…ねぇ、翔くん……」
「ん?」
参考書を選び終わり、
潤が太陽みたいに
輝く笑顔を俺に向けた。
「かき氷、食べない?」
「…いいね。食べよっか。」
とにかく、座りたかった。
立ってるのも、
くらくらしてくるから。
「翔くん、なに味がいい?」
「…んー、どうしよっかなぁ。
やっぱ定番のイチゴ?」
「あ、俺もそれいいなって
思ってたよ。」
仏のようにニコニコと
微笑む潤。
不覚にも、
胸が高鳴ってしまった。
…違う。
そんな目で潤を見てない。
「ねぇ、翔くん、」
「ん?」
「他にはなにも頼まなくていい?」
「…あー、ひとまずいいかな。」
「わかった。注文するね。」
俺より一つ下の癖に、
テキパキとしてる。
しかも、このルックスだ。
モテないわけがない。
なのに……
なんで潤は…
「……俺となんか…」
いるんだろう。
ねぇ、なんで?
教えてよ。
……なんでこんなに、
俺は期待してるんだろう。