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甘く、苦く

第57章 お山【大切な君へ】






きっかけは、
些細なこと。

大野先生は、
俺の近所のお兄さんで。



…恋人同士であったりする。


「ほらぁー、教科書開いて!
もうっ!」


なんて、頬を膨らませて
授業を再開する。

このクソ暑い中、
真面目に授業を受けるヤツなんて
少ない。


…俺?

大野先生を盗み見てる。



ふふ、チョークを落としそうに
なってる姿が愛おしい。


「あっ…


やっちゃったあ。」


なんて、床に落ちたチョークを見つめ
眉を下げる大野先生。

…また、笑いが起こる。



「わ、笑うなよぉ…
お前ら全員、補習にするぞっ…!

…あ、補習やってんのか…。」


なんて、独り言。




……そう、ここにいるヤツらは
みんな補習を受けてる。


俺は、少しの時間でも
大野先生といたいから。

雅紀がついてきてって
言ったのもだけど。


一番の理由は、
大野先生の授業だから。


「もーっ、これ以上笑ったら
みんな通知表2にしてやる!」

「おーちゃん、それ勘弁してぇー

俺、これ以上点数低くなったら
今月の小遣いないよぉ!」

「うるせぇ!
お前の小遣い事情はどーでもいいっ!」


雅紀と大野先生のやり取りを
見ていると、
気が楽になる。


…ほんと、可愛いなぁ。

生徒にからかわれて
顔を真っ赤にする教師なんて
ここらにいないから。


…ほんっと、智くんは変わんないな。

……あっ、大野先生か。

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