甘く、苦く
第57章 お山【大切な君へ】
ぞわっとした。
…これからされることに、
俺は期待していたんだ。
「雅紀、俺、イチゴがいい。」
「あ、じゃあ俺はマンゴーで。」
「えっ!?俺が払うの前提なの!?」
「「うん。」」
だって、ほら。
雅紀が無理矢理連れ出したから。
……いや、俺の場合は
大野先生に会いたかったから
着いてきたんだけど。
和也は違うと思う。
絶対無理矢理
引っ張り出されたんだろう。
「うぅ~俺のお小遣いいい。」
「いいじゃん。雅紀んち売れてるし。」
「だけどっ!
お小遣いくれないんだよ!
母ちゃんケチだから!」
なんて、雅紀と話してたら
和也が
「アイス溶けますよ。」
って、抱えるようにして
アイスを持っていた。
「あーごめん和也。」
「いえ。」
三人で並んで
アイス食って、
いつもみたいに別れて。
……大野先生の家に
行く準備を始めた。
どうせ脱ぐんだから、
ラフな格好でいい。
玄関のドアを開けるとき、
頬が緩みきっていた。
…だって、
これから特別授業が
始まるから。