甘く、苦く
第57章 お山【大切な君へ】
会いたいよ。智くん。
「夢なんかじゃ、
なかったんだ…。」
…え?
ふと、後ろで聞こえた
愛しい人の声。
「……しょー、くん、」
「さ、ささ、智くん!?」
「…んふ、ひさしぶり。」
ひさしぶりじゃないよ。
…バカ。
「…迎えに来るの、
遅くなってごめんね。」
「おっそいよ。バカ。」
寂しかったのに。
悲しかったのに、
智くんは、
迎えに来てくれなかったんだ。
でも……。
今、俺の目の前にいる人は
紛れもなく、本物の大野智で。
…夢なんかじゃない。
これは、現実。