
甘く、苦く
第58章 末ズ【one step】
「和、お風呂入っておいで。」
何かと気にかけてくれる母さんは
潤くんに似ている。
「…いいよ。
母さん入ってきなよ。
俺、やっとくから。」
腕まくりして、
キッチンへ入る。
「疲れてるでしょ?
お盆だから。
…俺、やっとくよ。
いつもなんもできてないし。」
唯一やったことは、
歌をプレゼントしたくらいだ。
それくらいしか、
俺はできてない。
…潤くん。
俺、潤くんに
何もできてなかったね。
俺がしたいことを
全部叶えてくれたのに。
俺はなんもしてない。
ごめんね。
「…じゃあ、お言葉に甘えて。
あ、和、後でちょっと話があるから。」
「うん、わかった。」
…話ってなんだろう。
俺、なんかしたかなぁ。
冷たい水が、
俺の手にかかる。
たった三枚のお皿と、
三個のお茶碗と箸が三膳。
これだけなのに、
なんか大変な気がして。
いつもは潤くんと一緒に
やってたから、
長い気がする。
…そんなことないんだけどね。
洗い終わって、
一息ついてたら。
母さんがお風呂から上がってきた。
「ねぇ、和、あのね…」
「…うん。」
「潤くんとのこと、本気なのね?」
「え…?」
聞かれたのは、
予想外のことだった。
