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甘く、苦く

第58章 末ズ【one step】

二宮side




「……あ、」


通知の音と一緒に
画面に表示されたのは
『潤くん』の文字。

ちょっと……うん。
ほんのちょっとだけ。


嬉しくて、
顔が緩んでしまった。


……いやいや、
バカか。俺は。

今ケンカ中なんだから。

…そんなにすぐ、
許せるほど、
俺は優しくないし
素直じゃないんだ…。


『この前はごめん。
俺が悪かったと思う。』


…それだけの、短い文。

ちょっと悔しくなって。

自分自身に。

こんなとき、…俺は
ほんとにアホだって思う。

悔しい。
自分が悔しい。

こんな俺が悔しい。


…もっともっと、
素直になりたいのに。

潤くんに甘えたり、
頼ったりしたいのに。


…わかんない。

…羨ましいよ。潤くんが。
ストレートに伝える潤くんが。

俺は羨ましくて仕方がないよ。



「…はぁ、」


ストレートに気持ちを伝えることが
どんなことか、
俺はまだ、未経験だ。

…抜け出したい。
こんなところから。


『和、やっぱり怒ってる?』

…怒ってなんてないのに。
既読無視なんて、最低だけど。

文なんかじゃなくて、
言葉で伝えたくて。


気付けば、
通話ボタンを押してた。

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